仲間の話

共依存のやみの中から(2)

とび

 はじめてそのグループに行った時、わたしは少し遅れてしまいました。 グループミーティングはもう始まっていて、部屋には10人ほどの人が、 話している人の話を目をつぶって聞いていました。 司会の人から、わたしは自分のことについて話してください、と言われました。 話したくなければ、話さずに聞いているだけでもいい、とも言ってくれました。 実際、わたしはほとんど話せませんでした。 ですが、目をつぶって話を聞いているうちに、なぜかすこし気が楽になりました。

 それから、毎週ミーティングに通うようになりました。 自分の話はほとんどできませんでしたが、なぜかそこへ行くと楽になりました。 ミーティングの中でいつのまにか眠ってしまうこともありました。 わずか10分ぐらいなのにその時はなぜかとても深く眠れました。 いつもは結婚相手のことが夢の中にまで出てきて、夢の中でもしんどいと感じていたのに、 ミーティングの中では不思議とほっと息をつけるように感じました。

 グループにはいろいろな人が来ていました。 例えば、アルコール中毒の人や摂食障害の人、対人恐怖の人、閉じこもりの人など。 そんななかで、わたしには身体的な症状は思い当たりませんでした。 ミーティングに来ている人の多くは、何かの症状を持っていて、自分の問題について話をしていきました。 ですが、わたしには自分の問題が何かよくわかりませんでした。 はっきりした症状を持っている人がうらやましく感じた時もありました。 はっきりした問題がない自分がミーティングへ来てもいいのだろうかと後ろめたく感じることもありました。 ですが、わたしにとってミーティングは唯一の安らぎの場所でした。 次のミーティングがくる日を毎日数えながら暮らしていたのを覚えています。

 ミーティングに通うようになって半年ほどした頃、わたしは職場での勤務シフトが変わり、 ミーティングに行けくなってしまいました。 それまでは、比較的早くおわる日だったのが、遅番に当る日になってしまったからです。 ミーティングに行けない日が続くうち、どうしようもないほどしんどくなってきてしまいました。 もうたまらなくなって、仕事が少し早く終った日、大急ぎで電車にのってミーティングへ行ったのです。

 もう終りかけで、10分か15分ぐらしか時間が残っていませんでした。 遅刻してどきどきしているわたしに、司会の人は「よく来たね」と声をかけてから 最後にわたしが話をする時間を作ってくれました。 この時、わたしもこのグループに来てもいいのだと感じました。 わたしのような、たいした症状ない者も来てもよいのだと思いました。 グループのみんなにに受け入れられていのだと知りました。

 それから、毎週ミーティングに通いました。いつも遅刻で、ほとんど終りに近いころでした。 それでも、わたしにとってはかけがえのない時間でした。 はじめから参加したいとはいつも思っていましたが、 以前のように遅刻してしまってみんなに悪いとは思わなくなりました。 ミーティングに通ううち、何人か親しい人もできました。 ミーティングの後、さそいあって喫茶店でお茶をすることもできるようになりました。

 ミーティングの後、何人かとお茶をしているとき、 わたしはどうしたら楽になるんだろうとある人に聞いてみました。 その人はもう何年もミーティングに通っていて、グループの世話係をしていました。 すると、その人は「手ばなしてごらん」と言いました。自分以外の人は変えられないと言いました。 自分以外の人のことは神さまか誰かにおまかせしたらいい、と言いました。 わたしは、結婚している人のことを手ばなすことにしました。半ばやけっぱちに近い気分でした。 それまで、ずっとわたしはあの人をどうにかしなくっちゃ、と思ってきました。 その人がアルコールに走ったのはわたしのせいだとも思っていました。ですが、もう疲れてくたくたでした。

 もう手ばなした、そう思って家に帰りました。家についたとき、頭の上の重りがとれたように感じました。 結婚している人のことを思うと、すこし悪いような気がしましたが、 それはどこかの神さまにおまかせすることにしました。 その人がどうして欲しいか、気を使うのをやめました。 あの人が口にだしていってくるまで、自分からはしないことにしました。 すると、以前ほど腹が立たなくなりました。あの人にしてほしいことは自分から口にだしていうようにしました。 その人ができるかどうか、その人がいやがらないかどうか、口に出すまえに考えるのをやめました。 すると、その方がずっとうまくいきました。どこかの神さま、でもいてくれていると思いはじめました。

 結婚している人のこと以外にも、わたしは少しづつ手てばなすようになりました。 完ぺきに仕事をこなすのを手ばなしました。約束に遅れないか、いつも気をつかっていたのを手ばなしました。 がむしゃらになるかわりに、神さまにおまかせということにしました。 すると、不思議とその方がうまくいきました。初めは信じられない気持ちでした。 ですが、手ばなして、おまかせ!とする方がうまくいくのをみているうちに、 本当に神さまっているんだと思いました。 欠点だらけのわたしのかわりに、神さまにひっぱってもらおう、そう思うようになりました。

 結婚している人との関係が、それほど良くなったわけではありません。 むしろ、別居状態でした。治療のためある病院に通院するようになったのがきっかけでした。 家から離れていましたので、病院の近くにあの人はアパートを借りました。 ですが、しばらくするとそのアパートで生活するようになりました。 家に帰って来る回数はどんどん減っていき、たまに帰ってくるだけになりました。 ですが、けんかをすることも、あの人のことを恨んだりすることはだんだんすくなくなっていきました。 以前よりわたし自身良くなっているように感じました。